「……雪島くん?」

「……叶恵のせいだ」

「ぅええ!?」

急に何…、っ!?!?

「う…っ……ゆき、し、まく…」

首を、彼の紅い唇が妖艶に這う。

そしてそれは、ある一点を捉えると、
楽しむようにリップ音を立てて
“痕”を残した。

「なに、をっ……んっ!」

「ダメ、叶恵…そんな声出しちゃ……」

俺が、止まらなくなるでしょ?と。

王子の唇は、尚もあたしの首筋を
這っていく。

そして、またある一点を捉えたとき。

「んっ!あっ、やだっ……!」

そこは、あたしの弱点でした……。

違う違う!別に変な意味とかないよ!?

ちっちゃい頃から、ここをくすぐられたりすると我慢できずに笑ったり……、

はたまた押されたりすると、ものスゴい勢いでジャンプしたり。

今回、雪島くんの唇に見事に見つけ
られて……。

「やっ、あっ……やめっ……」

「……ふーん、ここが1番弱いとこか」

弄ばれました。

「んんっ…はっ……」

止めなきゃ……このオオカミ王子を
止めなきゃ……!

どうすれば…あっ!

「やめ、やめて……慎也くん!」

____ピタッ

おぉ……見事に止まった。

あたしは、雪島くんから離れた。

「ハァ、ハァ……助かった…」

「…………叶恵」

「っハイ」

ヤバいヤバい怒られる怒られるヤバい
あぁぁぁぁ……。

「ハァ……っとに…」

雪島くんの声が低い。

きっと目も冷たい。

合わせるのが怖くて、思わず下を

向いてしまった。

付けられた“痕”が視界に入る。

「…………ばか」

「ハイ。え?」

てっきり、冷たい言葉で制裁を加えられるのかと思ったら。

びっくりして顔を上げると、雪島くんの顔が、これでもかと言うほど赤く染まっていた。

元が白いから、余計に映える。

そしてそんな顔を、細い腕が覆い隠していた。

驚いたことに、腕も真っ赤だ。

「…こんなの、不意打ちでしょ」

「え……」

不意打ちって、名前で呼んだこと?

そんなに弱いの…!?

「……慎也くん」

「っ……」

至る所が真っ赤に染まる。

面白い……!

「慎也くん?スッゴい赤いよ?
慎也くんの白いお餅みたいな肌が、
真っ赤っかだよ?」

「ちょ……やめ…」

「慎也くん慎也くん慎也くん!」

「怒るよ」

「ゴメンナサイ」

でも、良い武器を見つけたぞ。

これから、雪島くんがオオカミ王子に
なったときは、下の名前で呼ぼっと。