【叶恵side】

やっと、無事に終わった……。

さっき、サトニーってば“あたしのことが嫌い”なんて言ってたけど。

きっとそれは、彼女の強がりなんだと
思う。

ホントは……。

「……ふふっ」

じゃあ、あたしたちも戻りますか。

「行こ!雪島くん!」

「……………」

あ、あれ?

雪島くんは、まっすぐにあたしを
見つめていた。

ムスッとした表情で……。

「え?ゆ、雪島くん……?」

な、何か怒ってる……?

「あ、あーゆーえんぐりー?」

アナタハ オコッテイマスカ?

「………Yes」

うわあぁぁ!発音良過ぎ!

じゃなくて!

「な、なんで……?」

すると雪島くんは、音も立てずにあたしを抱きしめてきた。

さっきサトニーにやったのより、ずっと
強かった。

「……叶恵は、嫉妬しないの?」

「え……何に?」

「……さっき、俺が里中さんをこう
やって…抱きしめてたこと」

あー……なるほどね。

好きな男子が他の女子とそういうことをやってたら、思わずヤキモチしちゃう
的な、恋する乙女あるあるの……。

でも。

「ヤキモチなんて、妬いてないよ」

「……なんで?俺のこと、そんなに
想ってないから?」

……この王子は、ちと被害妄想が
強過ぎるようですね。

「そんなワケないじゃん」

あたしは、雪島くんを抱きしめ返す。

「あたしは雪島くんが好きだよ。
雪島くんも……えっと、その…」

「叶恵が大好きだよ」

「……うん、アリガトウ」

うぅ…なんか恥ずかしい……。

「だから、雪島くんがあたしを好きだっ
て知ってるから、ヤキモチなんて
しないんだよ?」

わあ……。

みるみるうちに、雪島くんの体が、
熱く、火照っていく。

それでも、その白い肌が真っ赤にならないのが不思議。