「雪島くん、ちょうど良かった。
サトニーが、言いたいことあるん
だって!」

白馬 叶恵が、とびきりの笑顔でそう
話しかける。

……っとに、ふざけないでよ…。

「どうかした?里中さん」

「うっ…ぁ……」

もうやだ、死んだ。

あたしの人生終わりじゃん…。

“チャンスは何度だってやって来るもの
でしょう”

さっきの白馬 叶恵の言葉が、嫌に脳裏に蘇ってくる。

そして、気がつけば。

「…あたしね、あたし」

あ、ダメだって。今言ったら、絶対…、

「……雪島くんが、好き…なの」

あーあ……もう、泣けてくる。

「ずっと、好きだったの。雪島くんが、
白馬……カナちゃんを好きだって
知っても、ずっと」

あたしの意思とは裏腹に、あたしの口は
次々と言葉を零していく。

雪島くんは、そんなあたしを透き通るような目で見ていてくれた。

「あたしカナちゃんに嫉妬してた!
だから……デマとか流したのも、全部
あたし……っく」

目の前が不自然に歪む。

その瞬間、頬に温かいものが伝った。

「ホント、に……ごめ、なさ、っい」

あたし、泣いてるんだ……。

「……里中さ」

「でも、これだけは言わせて!」

「……………」

「本当に、本当に、あたしは、雪島くん
が大好きだよ」

その言葉を口にしたとき、胸につっかえていた何かが、スーッと抜けていくのを感じた。

「……里中さん」

さあ、次は王子の返事の番だ…。

「俺ね、里中さんのこと、“悪い魔女”
だって、思ってた」

「……………っ!」

「裏でコソコソやってばかり、直接想い
をぶつけてこない、卑怯な人」

雪島くんの容赦ない言葉に、また涙が
溢れそうになる。

「……雪島くん、ちょっと」

訝しげな表情で、カナちゃんも止めて
くれる。

でも、王子の言葉の続きは。

「でもさ、こうやって、伝えられた
じゃん。里中さんは、もう“悪い魔女”
なんかじゃないよ」

次の瞬間、あたしは王子に、包み込む
ように抱きしめられた。

「……っな…?」

「伝えに来てくれて、ありがと。
……でも、ごめん」

……………。

「俺は、叶恵が好き。里中さんも好き
だけど、それは恋愛感情じゃない」

「……は、は。うん、やっぱり、ね」

あたしはゆっくりと雪島くんから 離れる。

「わかってる。それでも…答えてくれて
あたしこそありがとう」

そしてあたしは、カナちゃんの方へ
向き直った。

「……デマを流して迷惑かけたのは、
謝る。でも」

あたしの、精いっぱいの強がり。

「仲直りはしない。あたしは、あんたが
嫌いだよ」

すると、カナちゃんはニッと笑って
あたしの言葉に返した。

「そうだね。そのまんまだと、助かる」

?どういうこと…?

まあ、いいか。

あたしは、クルリと背を向けて、廊下の
先へ走り出した。

失恋したけど、なんかスッキリしてる。

……それにしても、さっきのカナちゃん
の瞳…。

……あの子も、何か抱えてるのかな?