【叶恵side】

「サトニー!」

体育祭が終わったあと、あたしは空き
教室にサトニーを呼び出した。

理由はもちろん、サトニーに真実を
確かめるためだ。

サトニーは、待ち合わせの時間通りに
来てくれた。

「どうしたの?カナちゃん」

話し方なんて考えちゃあいないけど、
サトニーならわかってくれるはず。

「サトニー、雪島くん、あんなこと
言ってなかったよ」

「……あんなこと?」

「よく考えたらさ、あの人大会で優勝
して、あたしになんでもやらせるとか
言って意気込んでるんだよね」

アレにはびっくりしたよ……。

「女装大会、嫌じゃないってよ」

「……はあ、それで?」

とぼけてるフリしても無駄なんですよ
サトニーさん!

目に焦りがチラついてますよ!

「サトニー、嘘ついたでしょ」

「……………」

「ていうか、全部計算だったんだよね?
今日の朝から……」

そう、勝手に、女装大会のクラス代表を
雪島くんにした人。

そうしたのはあたしだと、みんなに
言いふらした人。

「……あなたでしょう?サトニー」

「……………」

サトニーは俯いたまま、口をつぐんで
いる。

しばらく沈黙が続いた。

先に口を開いたのは……、

「…あーあ、恐いよね、ホンット」

サトニーだった。

ハァーッと長いため息をついたサトニーは、あたしの方をジッと見た。

「……あたしね、嫉妬してたんだよ」

「………あたしに?」

「あんた以外に誰がいるの」

おお……見事に口調が変わっておる。

「あたし……好きだったんだ、雪島くん
のことが」

「……雪島くん、を、好き…」

じゃあ、ライバルだったのか。

「あのときの笑顔で、あたしはあの人に
恋をした。でも……」

____ギッ

「隣には、あんたがいた」

ものスゴい勢いで睨まれる。

でも、あたしは目の色を変えないように努めた。

「なんで、白雪姫白雪姫言ってる転校生
を、あの人は見るんだろう、って、
思った途端気持ち悪くなったよ」

「……もうホント、気分最悪だった」

……………。

「だから、いっそのこと嫌われれば良い
んだって、考えた」

「あんたを嫌いになって、空いた心の穴
に、あたしが優しく入り込めば良いん
じゃないか、って……」

……………ああ、やっぱり。

早く、早く戻さないと。

この子は、歪んでる。

「……あたしは、あんたが嫌いだよ」

でも、

「あんたみたいな人に、あたしの王子は
渡さない」

でも、

「あんたなんて……っ……!」

____ギュッ

まだ直せるっ……!

「っな……!?何すんっ……!」