(うぅ…ひとりぼっち、怖いよぉ…)

高校1年の夏、あたしは親の都合で、
この学校に転校してきた。

「白馬 叶恵です。好きな人は、白雪姫
です!白雪姫のことなら2時間は
語れます!」

やっぱ自己紹介で、こんなこと言うべき
じゃなかったなぁ……。

女子にはクスクス笑われるし、男子には
『白馬のお姫様ぁ、やっぱ好きになんの
は白雪王子ですかぁ?』
とか言われるし……。

自分の席で1人、意気消沈してると……

「ねえ」

真上で声がする。

顔を上げると、そこには、整った顔立ちの男子が立っていた。

片手いっぱいに、ペンを持っている。

……ん?あのペン、見覚えが……。

「教室に戻る途中、めっちゃペンとか
落ちてたよ」

めっちゃ…ペンが…落ちてた……。

チラッと自分のペンポーチを見てみると
チャックの部分が盛大に開いている。

「えぇぇぇぇ!!す、すみません!
ああああたしのせいで……!」

あわわわ……いったい何本落ちてんの!

もう……転校していきなり何やってんだ
あたし〜……。

すると、男子はクスッと微笑んだ。

「そんな緊張しなくても大丈夫。……
ここは良いクラスだよ。ほら」

彼がチラッと見た方向を向くと、数人の女子たちがこっちをチラチラ見ている。

そして、ソワソワしながらこっちに
寄ってきた。

「は…白馬さん、まだ、学校の中まわっ
てないよね?」

「え、は、はい」

「なら、あたしたちが案内してあげる」

「あ……ありがとう!」

「うん……白雪姫の話、聞きたいし」

ほあぁぁぁぁ……!!

な、なんか、一気に話せちゃったよ!

さっそく、教室を出る。

……あれ?

さっきの男子……あ。

あの人は、教室の隅っこで、1人本を
読んでいた。

横顔綺麗……。

肌も白いし、髪もツヤツヤ。

「……白雪王子、いた」

無意識に呟いた言葉は、女子たちには
もちろん、彼にも届いてなかった。