「茜っ!」

開祭式のあとの束の間フリータイム。

あたしは、茜に会いに隣のクラスへ
向かった。

すると。

____ドタドタドタドタ

「カナァぁぁぁぁ!!」

「わあぁぁぁっっ!?!?」

ちょ、怖い!

めっちゃ突進してきたー!?

と、思ったら、目の前でピタッと止まり
ゼエゼエと息をする。

「だ、大丈夫?茜、どうしたの?」

呼吸が整ったらしい茜。

グワァッと顔を上げ、問いかけてきた。

「あんた、ゲホッ、雪島と付き合って
んの!?」

……………へっ?

「付き合って……ない、よ?」

「嘘!だってこの前、雪島がカナのこと
下の名前で呼んでたの聞いたよ!?」

「あぁ〜、あれは雪島くんが勝手に
呼んでくれてるだけだよ」

「なんで!?この前までめちゃめちゃ
拒否られてたじゃん……なんで!?」

おぉふ……詰め寄りますねぇ……。

えーと、なんて言えば……?

「……雪島くんがあたしのこと、好きで
いてくれてるから?」

「……あ、そうなの。って違くて!
あれ!?こんがらがってきた……!」

今度は1人でブツブツ呟き始める。

今日の茜、忙しいなぁ。

「ちょ、カナ。1つ、1つ質問、いい
ですか?」

「はい、どうぞ?」

「あんたは、雪島のことどう思ってる
ワケ?」

「え、好きだけど?」

「……この前、“あたしが好きなのは
白雪姫だから”とか何とか言っていま
せんでしたっけ?」

あ〜……そんなこともあったな。

「あたしもいろいろ学んだんですヨ」

もちろん、誰にも白雪姫クラスタの座は渡さないけどね!

「そ、そうなの……?てことは、2人は
両想い?」

「そう、なるの、かなぁ……」

「それで付き合ってないって、どういう
こと!?」

どういうことって……。

「お互いに好きってことは認識してる
けど、“恋人”になるのを了承してない
……ってこと」

茜に、点になった目で見つめられる。

え?何かおかしいですか……?

「……なんか……ややこしい境界線
作っちゃってんだ……?」

茜サン、冷や汗ダラダラかいてますよ!

「まあ……付き合うか付き合わないかは
あんたたちの勝手だけど……」

まだ目を点にして、冷や汗流してる茜。

「……喰われないように、しなね?」

……………?

「喰われる、って?」

「だってあの白雪王子、割とオオカミ
っぽいじゃない?」

オオカミ……。

『慎也、って呼んでよ』

『……キス、したい』

……うん、オオカミ。

「大丈夫!雪島くん優しいから、きっと
喰われない!」

まあ、喰うの意味わかんないけど!

____キーンコーンカーンコーン

「あ、チャイム」

そろそろ、体育祭かな?

「じゃあ、またね、茜!」

「気をつけてねー」

急がなきゃー……!

「……ホントに、気をつけて、カナ」

茜が後ろでボソッと言った言葉は、急いでいたあたしの耳には入らなかった。