「……は?俺が女装?」

琴音ちゃんと別れたあと、あたしは真相を確かめるため、委員会活動をしていた雪島くんの元へ向かった。

「うん……なんか、もう決まっちゃって
るみたいで……」

「……何それ」

ヤバい、雪島くんの目が怖い。

ガチだ。ガチで怒ってる……!

「叶恵、俺のコンプレックス知ってる
くせに、わざと言いふらしたの?」

っ……!

「そんなワケないじゃん!……好きな
人の弱さなんて、そんなの利用した
くもないよ……」

あたしは、言ってないのに……。

「……まあ、そうだよね」

雪島くんの手が、あたしの頭を優しく
撫でる。

「ごめん。疑ったワケじゃないから。
叶恵はそんなことやらないって、
知ってるからさ。泣かないで?」

「……っく、嘘……あたし、泣いっ…」

ああもう、あたし、ホント面倒くさい
性格してる……。

なんで泣いてんのー……。

「んー……それにしても、どうすれば
……俺、出ようかな」

「……ふぇ?」

……今、何て?

「俺、大会に出る」

「なっ、なんで!?女装だよ!?
雪島くん絶対嫌がる……」

すると、雪島くんはニコッと笑って、

「俺ねー、女装大会の優勝賞品知って
るんだー」

……訂正、怪しげに微笑んで言った。

「叶恵に何でも言うこと聞いてもらう
の、楽しみだな」

……この王子、実はSなんじゃないかと思うんですけど。

「今年の文化祭は、楽しみなことが
いっぱいだね」

「へ?」

「……キスのこと、忘れないでね」

はぅわっっ!!!

そーだったー……それがあったー……!

なんか、あたし転がされてる気が……。

「……ハァ、嫌われると思ったのに」

ん?

なんか、背後で不吉な呟きが……。

……………気のせい?