「……………」

「……………」

あー…いつまで抱きしめられるんだろ。

黙り始めて5分は経ってるよね。

喋りづらいなぁー……。

「……………」

「……………」

「……………白馬、さん」

「……な、に?」

「……………」

「……………」

うぉい!何ですか!

「………………き」

「え?」

「……好き」

っ……!

「好きだよ。とっても、好き…だよ」

ギュウッと、雪島くんの抱きしめる力が強くなる。

「好き。好き。も〜…好き過ぎる」

うぅ……そんなに言われると、勝手に
体が熱くなる…。

「………キス、したい」

!?!?

「そっ、それはダメ!」

慌てて、雪島くんの体を引き離す。

すると、雪島くんはシュンとした顔に
なった。

でも、さっきの目の色よりは、だいぶ
余裕が見えるのは気のせいか?

「なんで?俺、歯止めきかなくなる
から?」

きかなくなるんかい!

そこはもうちょい、理性保とうよ……。

って、そういうんじゃなくて!

「まだ早いよ!その……ねぇ?あたし
たち、付き合ったワケでもないし」

「え、そうなの?」

「え、違うの」

王子は、コテンと首を傾げて、

「俺はてっきり、叶恵はもう俺のお嫁
さんなのかと……」

「ちょっと待って」

どこまで話が進んでんの?

嫁って!

しかもさりげなく下の名前で呼んでる
しさー、何なの!?

「……しょうがないなー。いいよ。
やめてあげる」

ハァ……。

もう、今日は心臓バクバクし過ぎて
麻痺しそう。

____ツッ

あたしの唇を、雪島くんの白い指が
妖艶になぞった。

「……本番まで、待っててあげる。
覚悟してなよ?」

っっっ!!!!

待て待て待て!

あなた、そんな攻める系の人じゃなかったはずだよね!?

ちょっと前までさかのぼってみなさい、
お昼ご飯のお誘いも即却下されてた
間柄よ!?

もー……。

これから、大変になりそうだな。

「……………」

あたしはね、自称鈍感なんです。

だから、このときは全然わからなかった
んです。

「……………」

背後の視線が、どれだけ冷酷なもの
だったか。