白雪王子と白馬のヒメ

【慎也side】

あ〜……緊張した……。

ルーム長に、ギャグストーリーにされ
ちゃ困るって言われてたのに、危うく
そっち方面に行くところだった。

でもルーム長曰く、

『現役高校生の純愛?青春?恋?が、
“白雪姫”と重なってた!』

ので、いいらしい。

実は、俺はあのとき、少しひるんだ。

彼女の目に浮かんだ涙と、俺を見つめる
緩んだ顔。

……欲が、ふつふつと湧いた。

“喰って、しまいたい”

しかし、そんな卑しい感情を姫の前で
出すわけにもいかず。

俺は必死に、脳内シミュレーション通りの演技をしてみせた。

「怖かった……」

「何がだよ」

!?!?

あぁ……小川か……。

「なんでもない」

「嘘つけ!お前絶対オーディション中
いやらしいこと考えてたろ!?」

「なっ……!?」

何言ってるんだコイツは……!

とりあえず、

「安心しろ雪島、俺も考えてた」

殴ろう。

____バシッ

あ、受け止めた。

「オェーイ!雪島、バイオレンスは
良くないぞ!」

「……っさいな」

「暴言が顔と比例してねーぞ」

どうせ、中性的な顔してますよ。

「っと……でもさ、こりゃー王子役は
雪島に決定かな」

その言葉に、俺はヒクッと反応した。

ある疑問が、脳内に浮かんだからだ。

“どうして、王子役に立候補した?”

それを口に出そうとする前に、小川は
先を続けた。

「カッコいいとこ、見せたかったん
だけどなぁ……」

そう言って小川は、ある所に視線を
移した。

哀しそうな、愛しそうな、表情で。

白馬さんのいる所を。

……やっぱりコイツ、白馬さんのことが
……好き、なのか?

「……なあ、小川」

言ったときは、もう遅かった。

小川は、ルーム長たちの所へ向かって
行ってしまった。

「……ぜってぇ、渡さねぇ」

こんな荒い言葉を使ったのは、生まれて初めてだった。