「雪島くん!」

あたしは、ホールの隅でボーッとしてる雪島くんに駆け寄った。

「よく王子役やろうなんて思ったね。
あたしに姫を取られて悔しかった?」

「……………」

「……すみません、冗談デス」

氷のような冷たい視線、怖いです。

「……白馬さんが姫なら、」

ん?

「俺は、王子になりたいな、って、
思っただけ」

…………………。

んにゃっ!?

「えぇぇぇ!何それ!?」

雪島くんは、フイッとそっぽを向いて
しまった。

わぁぁぁ……それってスゴく……

「王子様っぽい……!」

「……うるさい」

照れてますね?照れているんですね!?

「……………」

だからその視線!怖いってば!

「とにかく」

ステージの中央へ歩き出す雪島くん。

「……小川に、王子は渡さない。ん〜、
姫も、渡したくない」

そして、颯爽と行ってしまった。

「……うあぁぁぁぁ…」

カッコいい、優しい、やっぱり……

「…………好き」

あたしの体は、オーディションなんて
できないんじゃないかってぐらい
火照っていた。