白雪王子と白馬のヒメ

【叶恵side】

雪島くんと小川くん、どちらが王子役になるのか。

その決断を委ねられたあたし。

オーディションということで、ただ今
ホールへ向かっている。

それにしても、琴音ちゃんが劇に出ないのは意外だったなぁ……。

てっきり、ホントに姫役かと思って
たのに……。

「カナちゃん!」

後ろから、琴音ちゃんの声が聞こえる。

「一緒に行こうよ!」

そう言って、琴音ちゃんはあたしの隣で歩き始めた。

しばらくの沈黙。

先に口を開いたのは、琴音ちゃん。

「カナちゃんってさ、雪島くんが好き?
それとも……律くん?」

唐突な質問に、「ん゛っ?」と濁った
声を出してしまった。

「カナちゃんが雪島くんにくっついてる
のは、本当に雪島くんが白雪姫に似て
るからだけなの?」

琴音ちゃんの真っ黒な瞳が、あたしを
まっすぐ見つめる。

違う……違うよ。

「あたしは、雪島くんの……カッコいい
とこも、弱いとこも全部知って……
誰かに似てる、とかじゃない。彼自身
を、好きになったよ」

まあ、わかったのは最近だけどね、と
付け足す。

「……じゃあ、律くんは好きじゃない
ってこと?」

「好きっていうか……あたし、小川くん
のことあんま知らないからなぁ……
もっと、知りたいな」

すると、琴音ちゃんは俯いてしまった。

「……らないでね」

「え?何?」

「……律くんのこと、好きにならない
でね!」

………………ほっ?

へっ?んっ?何だ何だ?

「琴音ちゃん……小川くんのこと、
好きなの?」

途端に、琴音ちゃんの顔がボッと赤く
なった。

へぇ……そうだったんだ……!

……でも。

「今の発言、ちょっと間違ってるん
じゃないかな」

今度は、訝しげな表情になる。

「何が?」

「あたしは別に、好きにはならない
けどさ。琴音ちゃんとおんなじ、小川
くんを好きな子にそれを言ったら…」

きっと……、

「取り返しのつかないことになるよ?」

そこまで言ったとき、あたしたちは
ホールに到着した。

琴音ちゃんは、またしばらく俯いた
ままだった。