【慎也side】

「はい、俺やります」

俺は、王子役に手を挙げた。

今まで、こういう劇なんかは、裏方や
脇役しかやったことがなかったけど……

今回は、本気だ。

白馬さんが姫なら、俺は王子。

なんでだろう、他の奴らに王子をやらせたくなかった。

「へぇ!雪島くんが王子?いいよ、
じゃあ……」

「ちょっと待ったー!俺も立候補してる
ってーの!」

廊下側の席から声が聞こえた。

声の主は……小川 律。

クラスの女子に、1番キャーキャー
騒がれてる奴。

ざっくり言うと、イケメン。

「マジ!?りっくんもやっちゃうの!?
あ、王子役、2人か……」

どうしよう、と悩むルーム長。

……しょうがないな。

「ルーム長。ここは、相手役の白馬さん
に決めてもらってはどうでしょうか」

「えっ!?」

白馬さんの動揺する顔が見える。

「……うん、それでいいよ!」

ルーム長もノリノリだ。

「じゃあ、決め方だけど……」

「あーあ、りっくんが王子やるんなら
あたし姫役立候補すれば良かったぁ」

「えー?ウチは雪島くんの方が良い
けどなぁ」

女子のヒソヒソ声も聞こえてしまう。

でも、それ以上に、俺は白馬さんの
返事に敏感になっていた。

「う、うぅ……」

言葉を詰まらせる白馬さん。

……自分で提案しておきながら、今更
不安に思う。

白馬さんが小川を選んだら……。

………………。

俺、白馬さんのこと……、

「……好き」

誰にも聞こえない声でそっと言った。