【叶恵side】

あの出来事から数週間後……。

「ねえねえ雪島くん!昨日のドラマ、
見た?前オススメって言ったやつ!」

「うん、見たよ。あれ面白いね。特に
主人公がさ……」

「雪島ぁ、悪い、ルーズリーフ1枚
くれないか?ノート、どっかに失くし
ちまったんだよ」

「どうぞ。あ、お礼はエクレアな」

「何だよそれ。まあいいや、サンキュ」

雪島くんの中の何かが変わったみたい
です。

事の発端は、あの日の翌日……

1人の女子が、こんなことを雪島くんに
問いかけた。

『雪島くん、なんだか……目が明るく
なったね』

おお……さすが、面白いところに敏感になりますね……。

すると、雪島くんも、

『うん、もうウジウジするのはやめた。
このクラスは、本当に良いクラス
だから……』

そして、彼はニコッと笑った。

『過去に囚われて、置いてかれたら
困るもんね』

そう言った雪島くんの目は、ホントに
明るかった。

あたしも、何だか安心できた。

そして、話しかけてきた女子を見ると…

『……そっか、良かったね。……じゃあ
さ、あたしたちと話さない?』

……………?

なんで、ほっぺが赤いんだろう……?

『あ、もちろんカナちゃんもね!』

『う、うん!』

何だろう……この違和感。

何か、まずいことが起こりそうな気が
するよ……。