肩を震わせながら、必死に声を押し殺す。
あのふたり、なんて可愛い会話をするんだろう。
母性本能といおうか、彼らを見つめる目が変わったと思う。
労りとか温かさとか。
聞いてたら、心が少し和んだよ。
体調の悪ささえ忘れるミラクルなやりとりに笑いをこらえていると。
「……相変わらずだな、悠真の偏食は」
「雑賀クンも知ってたの?」
涙目を拭いながら、ぼそりと呟く彼に振り向いた。
「ええ。将生と仲良くなれば自然と一緒に食事することになりますよ。他にも食べられないものがあって、いつもそれで激しいケンカを……」
だんだん、あのふたりの仲が見えてきたな。
誰もがパッと見、悠真クンが将生の面倒を見ていると誤解する。けど、実際の立場は逆なのだろう。主に食生活面で。
うーん。意外に奥が深い腐れ縁だな。
長年の謎が解けて感心しているさなか、
シュッと開いたドアの向こうから、
「あ、あの……将生くん、いますか?」
おずおずとした声で美女が覗き込んできた。
「ほわあぁぁぁぁッ!」
「えッ!?」
突然の脱出チャンス。
勢い余って、椅子から転げ落ちた。

