ここで、やっと雑賀クンが唸った。

「向こうが一枚、上手でしたね。しゃべってる内に身を隠したんでしょう」

 わずかにむっとした表情で、怖いことを言う。
 すると、諸悪の根源が容赦なく追い打ちをかけてきた。

「もー、姉ちゃんがどうでもいい話を長々と説明するから……」

「あんたのためにしてやったんだろぉッ!?」


 まるっきり違う事実に逆ギレしたって、いいと思う。
 将生の胸ぐらを掴んで殴りかかろうとした時、雑賀クンがやんわりと握った拳を包んだ。


「まぁまぁ。隠れても、打つ手はありますから」


 言うなり手を握ったまま、私の身体を反転させた。
 将生の身体も反転させ、背中が触れるくらい密着させる。


 雑賀クンも後ろ向きになり、それぞれが背中合わせになった。


「こうやって、それぞれ三人で室内を見張っていればいいんです。視界の中では何もできませんから」


 おお。
 その手があったか。

 逃げられて場所を特定できなくても、部屋全体を見渡すかぎり、あの女雛は何もできない。

 対抗する手段はあることに安堵したものの、


「……これって、かなり長期戦にならない?」