… 「…」 相変わらず黙っている彼女。ただ、俺をじっと見る。 「え、えっと…それじゃあ気をつけて、帰って…「っあ…」 俺の声を遮って、黒木リサが何かを言った。 「あ、りがとう…」 蚊が飛ぶような小さな声で、それでもはっきりと聞こえた。 『ありがとう』… 黒木リサの声は初めて聞いたが、予想よりも高くて、可憐で… 恥ずかしそうに下を向く黒木リサが、なんとも愛おしく思えた。