私が冗談で慰謝料だと言ってあげたキャンディーを見ても笑うことなく真顔の水澤先生。
キャンディーをじっと見つめたまま。
…………あ、れ?
なんで笑ってくれないの?
しばらくの沈黙のあと、水澤先生はキャンディーをスーツのポケットに入れた。
「帰るぞ」
そして、水澤先生はそう言いながら頭をポンポンとして私の横を通り過ぎて行った。
こちらを振り向くことなく資料室から出て行く水澤先生。
私も慌ててカバンを肩にかけて資料室を出た。
私の目に前を歩く水澤先生の背中が映る。
やっぱり怒ってる?
私が変な冗談を言ったから。
水澤先生なら笑ってくれると思ったのに……。
胸がチクチクと痛む。
廊下を進み、階段を降りる時も話しかけられることもなく振り返ることもなかった。



