「遅い!」
私が資料室に入るなり水澤先生はそう言った。
遅いって……。
水を汲みに行って、ここに帰って来るまで5分も経ってないよ?
「逃げたのかと思った」
「逃げませんよ」
私は水の入ったバケツを床に置いて、ロッカーから雑巾を出した。
それを水に浸し、しっかり絞ると机や椅子、窓のサッシを拭き始める。
「水澤先生?」
「ん?」
「何でお化け屋敷でお化け役をしてたんですか?」
私は窓のサッシを拭きながらそう言った。
「大学時代のツレに頼まれたから」
「学校の先生ってバイトオッケーなんですね」
私はサッシを拭く手を止めて、水澤先生を見た。
別に慌てた様子でもなく、淡々と床に散らかったものを片付けていく水澤先生。
「何が言いたいの?」
「別に?」
私はそう言って、止まっていた手を動かし始めた。



