「裕紀乃、私たちってラッキーなのかもね」
瑞葵がそう言ってクスッと笑った。
「うん」
水澤先生が吹奏楽部の副顧問。
麻子ちゃんが帰って来るまでの短い間だけど、部活が楽しくなりそう。
「学級委員長、誰?」
昼休みも終わりに近付いた時、教室に水澤先生が入って来た。
「あ、私ですけど?」
私は立ち上がって水澤先生にそう言った。
水澤先生と目が合って、胸がキュンと高鳴る。
水澤先生は私を見て一瞬だけど驚いた顔をした。
朝と同じだ。
「えーっと……名前……。まだ覚えれてなくて」
すぐに笑顔に戻った水澤先生。
「大倉、です」
LHRで自己紹介したばかりなのに、もう忘れるなんてね。
「あ、そっか。大倉、放課後に社会科資料室に来て?」
水澤先生はそれだけ言うと、教室を出て行ってしまった。



