「先生?ここ知ってるお店?」
「いや、初めて来た」
「そうなの?」
そこまで行った時、さっきの女性がお水とおしぼりを持って来た。
「どうぞ?」
おしぼりを差し出され、私はペコリと会釈して受け取った。
注文を聞くわけでもなく、女性はすぐにキッチンの方に帰って行った。
そう言えばメニューもない。
「今日は大倉の誕生日だろ?誕生日にどこか連れて行ってやりたいなぁと思って、ネットでいろいろ探してたら、ここ見つけたんだ」
「そうなんですね」
「夫婦二人で切り盛りしているらしくて、旦那さんが料理を担当して、奥さんが接客を担当。評価も高かったし、隠れ家的な感じでいいだろ?」
「うん」
「メニューも夜はコースのみらしい」
だからメニューもないし、奥さんが注文を聞くわけでもなかったんだ。



