「ゴメン……俺……」
水澤先生はそこで言葉を切った。
そのあと何を言おうとしたのか……。
“俺”は教師だから。
なのか、それとも“俺”には好きな人がいるから。
なのか……。
「謝らないで下さい……」
「ゴメン……」
謝ってばかりの先生は今にも泣きそうな顔をしている。
「私、帰ります……」
「送って行くよ」
私は首を左右に振った。
そんな優しい言葉を投げないで。
冷たく突き放して欲しい。
「じゃあね、先生……」
私は水澤先生の言葉を待たずに急いで玄関の外に出た。
ポロポロと流れる涙を拭いながら、私は水澤先生の家を後にした。