和歌は小坂君と一緒に帰った日から
友達以上の存在になりたいと前より強く思うようになっていた。

そんなことを考えてる時あの人の声が聞こえた。

『おはよう
 河東』

小坂君はいつもとかわらない表情で和歌に話しかけた。


『おはよう』

和歌は考え事を忘れるように、
全力の笑顔で挨拶を返した。

それを見た小坂君は不思議そうな顔をして
和歌の目をジーっと見つめている。

『河東
 なんか無理してない?』

和歌はちょっとビクッとして、

『何でもないよ』

と言った。


小坂君はまだ納得してなかったので、
和歌の耳に口を持ってきて、

『河東、何か悩んでる時は俺に
 教えろよ?
 友達だろ?』

と、そっとつぶやいて

『放課後屋上な!』

といった。


『あ、でも!』
和歌がそういったときには小坂君の姿はなかった。


本人に…小坂君と付き合いたいから悩んでる、なんて…言えないよ…。


和歌は小さな声でつぶやいた。


~放課後~

和歌はどうすればいいか考えながらゆっくり階段をのぼって屋上に言った。

ドアを開けるとすでに小坂君がいた。

小坂君はグラウンドを見ていて、それから
ドアの開く音を聞いて、ゆっくりこちらを見た。

『よお!河東、元気ないな…』

小坂君は悲しそうな声でそういった。


どうしよう…小坂君に今、このことを言ったら告白になっちゃう。
でも、このままずっと友達でいるのは…
つらい。

和歌は心の中でそう思って決意した。

『小坂君!』

『ん?どーした?』

小坂君はいつもとかわらない優しい声でそういうと和歌の方へ近づいてきた。

『あのね!小坂君
 実は、私ねっ…』
続きを言おうとするけど喉に何か詰まったみたいに続きがいえない。


お願い!!声、出て!!
和歌が心の中でそう叫んだ瞬間
暖かい風邪が私を包んだ。

この匂い…小坂君?

反射的に閉じためをゆっくり開けると目の前には小坂君の胸があった。

『河東、俺、気づいたんだ。』

『え?何に?』
和歌は小坂君に抱きしめられ、ドッキンドッキンいう胸の音を押さえながらたずねた。

『俺、河東のこと、
 好きだった。』


え?
今、私、小坂君に告白された!?


顔をゆっくり上げるとそこには顔をあかくした小坂君がいた。


『返事、聞いても言い?』

小坂君が和歌の目を見てたずねた。

『あの、その…
 こ、こんな私ですが、
 よろしくお願いします!!』

和歌はやっとのことで伝えることができた。


よかった、
和歌がそうつぶやいたとき
唇に何かあたたかくてやわらかいものが
あたった。

『んっ!?』

気付けば小坂君にキスをされていた。

『小坂…君…?』
和歌の胸は今でも飛び出しそうなくらい
ドクンドクンと鳴り響いている。


『ごめん
 つい、河東がかわいくて…。』

小坂君はそういうと手を口元にあててそっぽを向いた。


小坂君…かわいい…
もっとこんな顔みたい、もっともっと小坂君のこと知りたい。

和歌は心の中そう思った。



その日をさかいに和歌と小坂君は付き合うことになった。




和歌と小坂君がキスをしたとき、
ドアの前に立っていた一人の少女は複雑な気持ちで泣いていた。

『和歌…おめでとう…
 素直に祝えなくてごめんね。』

そうつぶやいてその場を後にした。