「えー、また魚ー?」
いつも家族がご飯を食べるダイニングに入り、テーブルの上に並べられた料理を見て、私はげんなりした。
3日続けて魚中心の和食となると、いい加減嫌になってくる。
「いいじゃないの!魚は体にいいし!」
お母さんは、お父さんにビールを注ぎながら言う。
だからと言ってこれは極端過ぎだろう、と私は思った。
「大体、今日で何日目よ……。」
「……愛ちゃん、お母さんがせっかく作ってくれたのに、文句を言ってはいけないよ。」
私が文句を言っていると、おばあちゃんにたしなめられてしまった。
私はムカッとして、おばあちゃんを無視し、いただきます、とぶっきらぼうに言い、食事を始めた。

「ところで愛梨、勉強の方はどうだ?」
しばらく野球中継を見ていたお父さんがテレビを消し、質問してきた。
「まぁまぁ、かな?」
「この前の模試も調子良かったし、今絶好調なのよねー?」
お母さんは上機嫌だ。
先日、学校で三者面談があり、模試の結果を担任に褒められ、それからお母さんはとても機嫌がいい。
もちろん、私も必死で勉強した分いい結果を出せたので、とても嬉しい。
「おぉ、そうかそうか!それなら安心だな!今年は大事な時期だし、頑張れよ!」
お父さんは、ホッとしたような表情になり、ガッツポーズをして見せた。
応援してくれたり、褒められたりするのは嬉しいけど、何となく恥ずかしかった私は、うん、とだけ言った。

「……ごちそうさま。」
しばらく経って、おばあちゃんはそう言うと、お箸を置いた。
「あら?お義母さんもういいんですか?全然食べてないじゃないですか。」
「悪いねぇ、ちょっと食欲がなくて……。もう部屋に戻るよ……。」
おばあちゃんは申し訳なさそうにそう言うと、さっきのように杖を持ち、自分の部屋に戻っていった。
「……。」
おばあちゃんが残した物を見て、私は小さくため息をつく。
誰のせいで、毎日こんな食事させられてると思ってるのよ、と思った。
おばあちゃんは、味付けの濃い物や油っこい物がほとんど食べられなくなった。
そんなおばあちゃんのために、ここ最近魚を中心とした和食がほとんどになったのだ。
だから、さっきおばあちゃんにたしなめられて苛立ってしまったんだ。
……でも、本当は苛立ちたくなんかないんだよ。
本当はおばあちゃんに優しくしたいんだよ。
それなのに、できない自分がとても嫌だった。
私は、2回目のため息をついた。