「・・・」
「澄子ちゃんはいい子過ぎるの。猛は澄子ちゃんがどんな我侭言っても嫌いになんてならないわよ?」
そうなのかな?
そうだったかな?
確かに昔の私は色んな我侭を猛に言ってた気がする。
それで猛が私を嫌ったりなんてしなかった・・・。
「なにか不安があるから、我侭言ったりできないのよ」
そう。猛が離れてしまったらって考えたら、思ったこと言えなくて。
「大丈夫って言えば、猛の負担にならないって思って・・・」
「バカ。オバカ」
お姉さんは私の頭をゆっくり撫でて、呆れたようにため息をつく。
その仕草が猛にそっくりで、またグっと涙がこみ上げてくる。
「猛が帰ってきたら旅行行くんでしょう?その時にはちゃんと思ってること言って元通りになって帰って来なさいよ?」
「元通り、ですか?」
そんなに変わっていたんだろうか?
変わらないように頑張って笑っていたはずなのに。
「猛が。柄にもなく落ち込んでるのよ!疲れてるのかと思ったら、違うのよ」
「?」
「からかい半分で、澄子ちゃんと上手くいってないんでしょ?って聞いたらね?」
ドクン、猛はそこでなんて答えたんだろう?
ビクンと身体を揺らした私の手をギュッと握って、猛にそっくりな微笑をくれた。
「大切すぎて、どうしていいか分らないって」
「・・・っ」
「本当、そんな事猛の口から私に言うなんてビックリよ!相当溜まってたみたい」
猛・・・
猛・・・
「私っ・・・」
「はいはい。猛は前の大通りを真っ直ぐ通って帰ってくるから」
ガタ!!っと立ち上がった私の行動を読んだように、お姉さんが呟く。
「迎えに行ってあげなさい」
「はい!」
バタバタとリビングを走りドアに向かう。
ドアノブを開けるのと同時にお姉さんがいる方に振り返り口を開く。
「お姉さんありがとう!行ってきます!」
ペコッとお辞儀をして猛の家を飛び出した。
早く、早く会いたいの。


