『私』だけを見て欲しい

「今は血流が良くなる薬を、点滴と一緒に流しています。そのまま様子を観て、明日の朝一番にCT検査を行いますから…」

それまで会えないと言う。
母はICUに入ってて、面会は謝絶だそうだ。

「ご心配されなくても大丈夫です。状態は安定しておられます…」

はぁ…と息を漏らす。

「…でも、軽いマヒが見られるんですよね⁉︎ それでも、大丈夫なんですか…⁉︎ 」

思い直して聞く。
急に容体が変わったなんて連絡は受けたくない。

「大丈夫ですよ。検査が始まるまで、ご自宅に戻られてて結構です」

いつまでも病院にいられる方が迷惑な言い方。
聞きたいことはあっても、それ以上は聞くこともできない。

「…じゃあ、よろしくお願いします…」

不本意ながら席を立った。
足元がフワついてる。
さっきまでの幸せはどこかに行って、今は不幸のどん底にいるみたいだ。


診察室を出ると、真っ青な顔で泰が近寄ってきた。
…怖かったに違いない。
肩を抱き寄せて、安心させるように言った。

「おばあちゃん意識戻ったって。でも、軽いマヒがあるから、朝イチで検査するって。…それまでは家に帰ってていいそうよ…」

優しい声を出す。
母親として振る舞う。
さっきの自分とはまるで違う。

ここにいるのは、親である私……


「…お母さん、どうしてもっと早く帰らなかったんだよ!」

泰が泣き出す。
緊張が解けて、悔しさをにじませた。