『私』だけを見て欲しい

梱包から外されるビニール商品の臭いを嗅ぎながら夏を思い出す時、いつもここに辿り着く。

あの時の怖さと悔しさと歯痒さは、何年経っても忘れない。
胸がむかつく様な苦しさに襲われる。
同時に涙が溢れそうになった……。


「…佐久田さん…?どうかしましたか?」

無言でいる私に、紗世ちゃんが声をかける。
いつもならアレコレと品評しながら商品を出すのに、じ…と黙ってたからだ。

ゆっくりと立ち上がって、深い息を吐く。

「…ごめん…ちょっとビニールの臭いで気分が悪くなって…。休んできていい?」

涙が溢れそうになるのを必死で堪えてた。
紗世ちゃんにはそれがスゴく具合の悪いように見えたらしく、大げさに気遣われた。

「イイですよ!少しどころか、シッカリ休んできて下さい!こっちはやっときますから!」

階段まで送りましょうか?という彼女を断り、一人で上がる。
休憩室は事務所の横。
使用時間は決められてるから、今は誰もいないハズ…。

(あそこへ行って少し泣こう…そしたらスグに元気が出るから…)

そんな考えで向かった。
まさかそこに、彼がいるとは思わなかった
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重い足取りで休憩室のドアを開けた。
途端に零れ落ちる涙の粒を、止めることはできなかった。

引力に引き寄せられるように雫が床に落ちる。
それに合わせて、砕ける様に膝が折れた。

「うっ…ふっ…うっ…ぐすっ……」