『私』だけを見て欲しい

目の前に見えた部屋の光景に、サァー…と血の気が引いた。



……元夫は…ベッドで浮気相手を抱いてた。
私と毎日寝てたベッドの中で、彼女のことを愛してた。

心臓が止まりそうなくらい驚いて、思わず腕の力が抜けた。
床に落とされた泰は大きな声で泣きだして、ようやく2人は私達の存在に気づいた。
裸のままの元夫が、泰を抱き上げようとして近寄ってくる。
私はそんなあの人を、思いきり跳ねつけた。


『触るな!私の子供に寄らないで!!』

怖くなるような自分の声を憶えてる。
あの人は驚きと裏切りがバレた恐怖とで、目をまん丸にして、顔を引きつらせた。


…浮気相手は、ブラも付けずに出て行った。
泰を抱きしめ、私はその場にへたり込んだ。

崩れてくシアワセの音を聞きながら、(どうしてこうなったんだろう…)と、天井を見上げた。
元夫の言葉は、謝罪には聞こえなかった。

『魔が刺した』のは、私が『魅力的じゃないから』…としか、聞こえなかった。


『ヒドい!2度と許さない!!あんたの顔なんか見たくもない!!2度と私達の前に現れないでっ!!』

その場に思いつく限りの文句を言って罵った。
手に持てるだけの荷物をまとめて、家を飛び出したのは夜中。
お財布には、お金は殆ど入ってなかった。

泰を連れて行ける所はどこもなく…母が一人でいる実家(いえ)に、戻るしかなかったーーーーー。