『私』だけを見て欲しい

「今年は冷夏になると言ってたから、例年通り入荷すると余剰在庫を抱えることになると思う。だから、売り切り作戦で行こうかと考えてるんだけど…」
「売り切り?…じゃあ入荷は1回のみ…ってことですか⁉︎ 」
「うん…夏は短いって判断で」
「そうですか…じゃあ入荷したらすぐにディスプレイ変えないといけないですね。夏仕様に」

紗世ちゃんの言ってた『ミニガーデン』はお預け。
売り切れるように商品を前面に出さないと…。

「佐久田さんはよく分かってるな。助かるよ」

マネージャーが嬉しそうな顔する。
この人は滅多と下りて来ないけど、来たら一応は褒めてくれる。
余計な仕事を振ってくることもあるけど、頼りにされてる証拠だと思ってる。

「…だって、私はマネージャーの弟子ですから」

私が4時間パートとして勤めだした頃、山崎マネージャーは6階の責任者として働いてた。
卸会社のことも流通のことも何も知らない私のことを、熱心に指導してくれた。
初めてのディスプレイ作りを任せてくれたのも彼。
…あの時も、いろいろと教えてくれた。

「…確かに愛弟子だな…」

ははは…と声に出して笑う。
機嫌のいい証拠。
今朝は何かいい事があったのかも。


「おっはよー!佐久ちゃん!」

階段から大きな声がして飛び上がった。
ぎょっとして振り向いた先に、息を切らして階段を上がってくる『れんや』君の姿があった。

「お…おはよう…」

ドキドキしながらの返事。
まさか、金曜日の流れのまま呼ばれるとは思ってなかった。