『私』だけを見て欲しい

山崎マネージャーが事務所に帰った後、紗世ちゃんはブツブツ言いながら検品を進めてた。
文句を言われながら出される商品。
せっかくのいい物も、台無しに思える。

「…紗世ちゃん、さっきのミニガーデン風のディスプレイの話だけど…」

一緒に手伝いながら声をかける。
イヤそうな顔をする彼女に、さらりと言った。

「良いアイデアだと思うよ。この商品が完売して、次が入ってきたら作ってみるから」

手伝って…とは、敢えて言わない。
自分一人の作品作り。
ディスプレイコーナーには、そんな思いもあるから。

「…そうですか⁉︎ じゃあ、その時は何かお手伝いしますね!」
「お願いね…」

期待せずにいよう。
この子に裏切られたことなんて、数え切れない程あるから。


優しい色合いの商品を眺めながら、少しだけホッとする。
市場に出回る前の新しい物に、イヤな雰囲気だけは残したくなかったーーー。



午後7時半。
居酒屋での新歓パーティーは始まった。

社長の挨拶から入り、乾杯の音頭を終えて、各自好きなように歓談してもらう。
その間、幹事役の私達はビールやお酒を注いで回りながら、カラオケや余興の準備をする。
あれこれと気を使いながらのお酒は、ちっとも美味しくない。
加えて今日は、メンドくさい事になってた。


「…ホントなんっす!オレら付き合ってるんっすよ!ねっ!佐久ちゃん⁉︎ 」
「え…う、うん…まぁ…」