…初めて抱き合うカラダには、幾つもの引っかき傷があった…。

「飼い猫にやられたんだ…」

困ったように教えてくれた。
水がキライで、シャンプーの時に引っ掻かれたんだそうだ。

「泰と結衣に会わせる時、綺麗な方がいいと思って…」

最初からセットみたいに思ってくれてた。
だから、泰にも会おうと言ってくれた。

「母親をやってる結衣も、娘を頑張る結衣も好きだ。仕事もデキる有能な部下だった…。料理も上手い…。でも、俺は……」

上から見下ろされる自分にドキドキする。

こんなふうに自分をさらけ出す日が来ることを…

ずっと…期待し続けてた…。

「弱い自分を見せた、あの日の結衣が一番好きだ…。感情を表に出してた…あの時の結衣は、これまでで一番可愛かった…」

30過ぎて、子持ちで、オシャレでもなくて、
いつもピリピリ仕事ばかりして、言いたい事も言えず、言いたくない事を口にしてきた自分…

そんな自分らしくない私のことを、彼はちゃんと分かってた…。

「嘘はつかないと約束する。裏切られて嫌な思いをしたのはお前だけじゃない。辛い思いはさせない。…俺が一番……したくない…」

……重なる唇から熱い息が漏れた。
彼のカラダが動くたびに、恋する瞬間と同じくらいの胸の締めつけと、ゾクゾクとした鳥肌が立つ。


求められることが喜び…だと知った。
好きな人の息がかかるのが幸せ…だと分かった。

その瞬間の全てが、恋なんだと思う。