「そうそう。録音の時、俺たちは別の仕事で居なかったけど、詩月さんたちはスゲェ大変だったって聞いて」


「撮影の時のロマンス2番のアフレコ、指が吊りそうだった」


「金管楽器の先輩たちは大変そうだったかな。
僕は自分でアレンジした楽譜だから……いい勉強になった」

詩月さんは、澄まし顔で言う。

俺と空は、それを聞いてクスッと笑ってしまった。


「詩月さんって、頑張ったなって面と向かって言われるの嫌いな人でしょ!?」

俺は、からかってみたくなって言ってみる。

ハッとしたように、目を逸らした詩月さん。
空が「あ、赤くなった」ポツリ呟いた。

試写会には大学学長、金管楽器メンバー、千住小百合さんも関係者ということで参加している。

CM映像が流れ始めると、苦虫を噛み潰したような顔で席に着いていた学長も、みるみる満足気な表情になった。