――「ローレライ」

 昴と空が腰を屈め、楽譜を拾い集める手が強張り小刻みに震えていた。

詩月さんは俺たちが散乱した楽譜を拾うのを遮り、震える手で楽譜を掻き集め鷲掴みにする。

「詩月……さん!?」

 昴の声が強張っていた。

 ――オーケストラはチームワークなのに、苛めなんて信じらんねぇ

 岩舘さんが詩月さんを横浜駅まで迎えに来た時、吐き捨てた言葉が本当だったことが悲しかった。

詩月さんは逆風や強風に向かい、気丈に耐えて舞台に立っている。

そう思うと胸が締めつけられ痛かった。

小百合さんが詩月さんの名を呼びながら、詩月さんに駆け寄ったかと思うと、詩月さんの身体を抱き寄せギュッと抱きしめた。