風は囁く「君と輝きたいから」

「周桜詩月が、アイドルグループXCEONコンサートのアンコールで、『Jupiter』に合わせて弾いた『愛の挨拶』は……」


「如月さん!?」

僕は如月さんが妹尾さんに読み聞かせているページを慌てて閉じ、雑誌を取り上げた。

盆明け。

僕は学長室を出て、ゆっくりと正門前に向かった。

昨晩、僕は楽譜を見つめながら、電話を掛けた。


――緒方。明日11時、正門前で待ってる


僕は楽譜を念入りに見直し、ヴァイオリンを調弦し、緒方を待つ。

盆が明け朝夕は幾らか涼しくなったが、日中の陽射しは未だ厳しい。

煉瓦作りの正門通路に、容赦なく陽が照りつけている。

正門像の僅かな影が、辛うじて陽射しを和らげる。

何処からともなく、法師蝉(つくつくぼうし)の啼く声が聞こえてくる。

僕は約束の時間を見計らい、曲を弾き始める。

緒方が緩やかな坂道を登り、正門へ向って歩いてくる姿を思い浮かべる。