暴走気味の僕の演奏に、オケの調和が乱れては立ち直り、乱れてはまた立ち直りを繰り返す。

オケのメンバーが、戸惑いながらも懸命に、食らいつくように、僕の演奏に合わせてくれている。

僕はそれを感じながら、自分の感情を抑えて演奏することができない。

マイスターが、そのさまを満面の笑みで、何度も頷きながら、指揮棒を振っている。

Nフィルと契約して以来、何度も弾いてきたホルスト作曲「Jupiter」――。

僕は、初めて弾く曲のように、新鮮に感じた。

本番さながら、演奏に気合いが入る。

Xceon(エクシオン)コンサート以降、弾き方が変わったとか音色が変わったと言われる。

僕自身には何の自覚もない。

オケでは「頼りないオルフェウス」と呼ばれている。

僕はこの日、練習の間中ずっと、どの曲目もハイテンションで弾いていた。