「だよな。後日のNフィルコンサートは超満員で、出待ちが凄かったらしい」

そう、Nフィルのコンサートは、受付開始2時間前にはロビーがいっぱいだった。

1時間も受付時間を繰り上げたほどだ。

周桜くんのファンで溢れていた。

アンコールは、1度では収まらず3度も行われた。


「周桜が、前に女とデュエットしてた動画あったよな」


「うまくやってるのか? Nフィルは、苛めがあるって噂だよな」

そこに、扉の風鈴が涼やかに鳴って、周桜くんが入ってくるなり、一言。


「Nフィルに苛めなんてない」

周桜くんは、キッパリ言い切る。


「メデューサは大丈夫なのか?」


「メデューサ? ああ、妹尾……彼女か。彼女とは1番仲がいい」

周桜くんの楽譜を、赤文字のローレライで埋め尽くした張本人が、メデューサだったって思う。