――「どうやらローレライっていう、半端なく恐い怪物にうなされているようだから」


桃香さんは「ローレライ」が何なのか、知っていたんだと思った。

「ローレライ」が、歌声で船乗りを惑わし難破させる、半人半鳥の怪物だと知っていたんだと。

俺たちが病院につくと、マネジャー室長が、診察室の前に待機していた。


「どうなんですか？　何故、自殺なんて」

誰先にでなく、訊ねた俺たちに「まだ何も……」と顔をしかめた。


「２０時前、動画サイトに周桜詩月の動画がＵＰされていた。電車の中で録られた号泣場面……それを観て、様子がおかしくなったらしい」


小百合さんが俺のスマホに、電話をかけてきた件だと思った。


「また、ローレライ」

空が舌打ちをする。

桃香さんと詩月さん、２人の間で、どんな会話があったのか、知りたくてしかたなかった。