風は囁く「君と輝きたいから」

「お前にとって、郁はローレライではなく、額田姫王ってこと?」


「緒方を見てると、頑張りたいと思う。
辛くても頑張りたいと」


「それって……」


「おい、野暮なこと言うなよ。照れ臭い」


「オルフェウスはエウリュディケではなく、額田姫王に魅せられたか」


「えっ!?」

呟いた安坂さんの意味深な言葉の意味。

詩月さんは郁子さんへの自分の気持ちに、気づいていないんだなと思う。


――緒方には安坂さんがいるし、彼女はライバルだ


詩月さんは昨日、そう言っていた。

真面目な顔だった。


「詩月、今日はゆっくり休めよ。明日は朝からだからな」

岩舘さんの声が優しい。


「難しい処置じゃない。あっという間に終わっちまう」

岩舘さんは、ICDのことを話してるんだと思った。