高校に入って付き合い始めた加賀美 沙彩(さあや)。

ココを喪って、女なんて誰でも良かったんだ。忘れさせてくれるなら、誰でも……。けど、沙彩といる時間は気付けば楽しくて、大切にしようと思い始めていた。そんな時だった、ココと再会したのは。


「本当に、ココだったんだよね……? 人違いとかじゃなくて……ほんと、に……ココだった?」


ボロボロと泣き始めた恵奈の顔を直視できなかった。

地面に着いた手に力が入る。


「髪が伸びて、化粧もしてて……別人かと思った……けど、ココだった。 声とかしぐさは変わってなかった……っ。」


華奢な体つきもそのままで、抱きしめたくなった。けどその時、沙彩の顔が頭をよぎったんだ。俺の気持ちを知りながら傍に居てくれた沙彩。こんな俺を支えてくれた……それなのに、俺はその日からココの顔が頭から離れなくなった。

頭を抱える様に顔を両手で隠した。

制服のズボンにシミが出来ていく。


「ココの顔を見て、声を聞いたら頭ん中が訳分かんなくなった。 分かんないけど、怖くなったんだよ……だからっ、ココを突き放したっ、逃げたんだっ、俺は!!」


逃げた挙句、沙彩とも向き合えなくなって、結局沙彩まで傷つけた。

沙彩に別れを告げた時、思い切り泣かれた。あんなに子供みたいに泣きじゃくる沙彩をあの時初めて見た。それなのに、それ以上にココの今にも泣きそうな顔が頭から離れなかった。