「ねぇ……どういう事? ねぇ……っ、秋生(しゅうせい)!!」


静寂を破ったのは恵奈だった。

涙を溜めている恵奈を見るのは心を喪った日以来だ。気の強い恵奈が涙を見せる事は滅多にない。


「あいつが言った通りだよ。 数か月前、ココと会った。」

「会ったって何!? 何で!? ココにいったい何が合ったの!?」

「……知らない。」

「知らないってお前っ! どういう事だよ!? あいつに会ったんだろーが!!」


急に直に胸ぐらを掴み上げられ、足元がふらついた。

拳にグッと力が入る。


「直ぐに追い返した……俺たちにもう関わるなって言った……。」

「てめぇ……っ、何勝手な事してんだよ!!」

「直ッッ!!!!」


殴られた勢いで地面に尻から倒れこんだ。殴られた左頬がジンジンする。口の中も切れてしまって血の味が広がっていく。


「お前の様子が可笑しかったのはそのせいかよ!?」

「…………。」

「加賀美(かがみ)と別れたのもそのせいなんじゃねーのかよ!? 未練タラタラなくせして強がって一人で突っ走ってんじゃねーぞ、クソ秋生!!」