扉が開き、またしても一年の男が屋上に入ってきた。


「中々教室に来ねぇと思ったら、お前何してんだよ!!」


一年の男は吉良の腕を掴むと怒鳴った。


「蒼汰、手、放せよ。」

「は? 手ぇ放したらお前早瀬先輩殴んじゃん。 んな事したらココちゃんが悲しむぞ。」


吉良の表情がどんどん苦しそうに歪んでいく。突き放す様に手を放した吉良は舌打ちをした。


「そんな事っ、お前に言われなくても分かってんだよ!!」

「はいはい。 そーですか。」

「早瀬先輩、俺にはあんたの気持ちなんてどーでもいい。 次またココちゃんを泣かせる事があったら、そん時はバスケできなくなるくらいボコボコにしてやるから。」


そう吐き捨てた吉良は早々に屋上から出ていった。吉良を追いかけて出ていこうとした蒼汰と呼ばれた一年が振り返った。


「完璧部外者の俺が言うのも何なんですけど、ココちゃん、早瀬先輩の名前聞いただけで泣きそうな顔してましたよ。 ま、だから何だって話っすけど、一応?伝えときます。 じゃ、吉良が失礼しました。」


嵐の様な奴らがいなくなり、また屋上には直と恵奈と俺の三人になった。二人が出ていった扉から視線を外せなかった。重苦しい雰囲気。直は完璧切れている。恵奈は困惑している。顔を見なくても長年の付き合いから二人の事は何となくわかる。