「吉良君、知らないみたいだから言うけど、ココは死ん……」

「生きてますよ。 早瀬先輩から聞いてないんですか?」


恵奈の言葉を遮った吉良は、ジッと俺を見ている。

静まり返った屋上。その沈黙は凄く長く感じられた。


「どーいう事だよ!?」


直は吉良から手を放すと、感情のまま俺を睨みつけた。こんな顔を向けられたのは小学校の時以来だなと思った。


「聞いてなかったんですね。 でも揉めるなら後にしてもらっていいですか?」

「は? てめぇがすっこんでろ!!!」


俺は立ち上がって吉良と視線を合わせた。


「話って?」

「ココちゃんにもう関わりたくないって言ったらしいですね。」

「それが? お前には関係ないこ……」

「関係ない訳ないだろ!! ココちゃんが事故でどれだけ大切なものを喪ったか、どれだけ辛いリハビリに耐えたのか、笑顔を取り戻すのにどれだけの時間がかかったのかあんた知ってんのかよ!? 知らないだろ!?」


俺の胸ぐらを掴み上げた吉良の目には薄らと涙が滲んでいた。いつも女子に囲まれヘラヘラしている奴と同一人物とは思えなかった。