走って追いかけていると、彼女の後姿を見つけた。


「待って!!」


俺の声に気付いた彼女は振り向くと驚いた顔をした。さっきの事もあるし、そういう顔をされるのは何となく想像がついていた。


「これってもしかして君の?」

「あ! はい、私のです!!」


届けて正解だったみたいだ。


「わざわざすみません。 ありがとうございます。」

「まだ近くに居てくれて良かったよ。」


さっきの彼女は戸惑った表情ばかり見せていたけど、今はよく見かけていた時の表情だった。千切れてしまったストラップを手に、嬉しそうな顔をしている。そんな彼女を見て俺も何だか嬉しくなった。


「さっきは友達がごめんね。」

「いえ、気にしてませんから大丈夫です。」

「それならいいんだ。 あ、俺は千里(せんり)。 名前聞いてもいいかな?」


本当は名前は知ってたけど、聞かないと不自然だよなと思い、名前を聞いた。学年も違うのに名前を知っていたら気持ち悪いと思われるかもしれない、とも思った。


「あ、心です。」