めくるめく恋心

くるっと背中を向けた市川 心の腕を輝夫が掴みギョッとした。振り返った市川 心も「え?」という顔をしている。


「あの……。」

「せっかくだし、連絡先交換しない?」


ガンガンいくタイプなのは知ってたけど、まさかこのタイミングで連絡先を聞くとは思わなかった。市川 心は本気で困っているみたいだ。上級生に囲まれた中そんな事言われたら、俺も困ると思うけど。


「お前ね、困ってるだろ。」

「えー、だってこういう時じゃねぇと連絡先聞けねぇじゃん。 いっつもバスケ部の男ががっちりガードしてるしよー。」

「あー右京でしょ? この子に手ぇ出したら、右京だけじゃなくて欄からもしばかれんじゃないの?」

「馬鹿が引き止めちゃってごめんねぇ?」

「あ、いえ……あの、失礼します!!」


市川 心は慌てて頭を下げると急ぎ足で音楽室を出ていった。忘れ物を取りに来ただけなのに、悪い事をしてしまった気がした。


「お前、本当馬鹿。」

「馬鹿って何だよ! せっかく連絡先ゲットできるチャンスだったのに、みんなして邪魔しやがってー。」


_あれ? これ……。

床にストラップが落ちているのに気付いた。もしかしてと思い拾って急いで彼女を追いかけた。