中学の三年間俺はニューヨークの学校に通っていた。その間は伯父……今の心の両親のところで暮らしていた。

中二の夏、突然俺の家族に連れられて心がニューヨークにやってきた。けどその時の心は俺の知っている心じゃなかった。顔も体も傷だらけで、人形みたいに表情も変わらなければ、口も利かなかった。

笑顔の印象が強かったからか、目の前に居るのが心だと信じられなかった。

心が家族旅行で事故に遭ったとは聞いていたが、詳細を聞いたのは心に会った後だった。

事故直後は暫く集中治療室にいた心。そこを出て自分だけが生き残った事を知った。初めの頃は泣き叫んで情緒不安定な状態が続いていたらしいが、気付いたら虚ろな目をしたまま口を利かなくなったと聞いた。

心は伯父夫婦に引き取られ、俺がニューヨークに居る間はずっと一緒に居た。今の様に。日本の学校が長期休みに入れば吉良も遊びに来ていた。

周りのサポートと日本じゃなくガラリと環境を変えたのが良かったのかは分からないが、心の精神状態は少しずつ回復していった。俺が日本に戻る頃には普通に笑えるようにもなっていた。

もしも早瀬のせいで心があの時みたいな状態になったら、俺は迷わず早瀬をぶん殴りに行くだろう。俺だけじゃなく、それは吉良も一緒だろうなと思う。あいつの場合今の状況でもぶん殴りに行きそうだけどな。だから吉良には言わない。早瀬が吉良と同じ高校だという事は……。