ほんのり顔の赤い奈々子ちゃんは酔っぱらっているのか、一人でずっと喋っている。どれもかれもがきーちゃんの話しで、もう耳を塞いでしまいたかった。

聞きたくないのに聞きたい……そんな思いが少なからずあるせいか、足が動かなかった。


「特にベッドの中の吉良は綺麗だなーって思うんですよね。」

「……え?」


幸せそうな顔でにっこり笑われて、泣きそうになった。きっともう私は上手く笑えていないと思う。怖くて鏡が見られない。


「あ! ごめんなさい! 身内のそんな事情聞きたくないですよねぇー、あははは!」

「…………。」

「私そろそろ戻りますね。 今度吉良の話し聞かせて下さいね〜。」


笑顔で奈々子ちゃんは出て行った。最後に見せた笑顔が勝ち誇った様な顔に見えた。本当にそんな顔をしていたのか、私の心が荒んでいてそう見えたのかは分からない。

一生懸命抑え込んでいた涙がとうとう零れ落ちた。

_もう、ダメだ。 私、きーちゃんが好き……。

自覚するのが怖くて堪らなかった。気付かないふりをしていればいつの間にか忘れて、付き合い始めた頃の様に千里と楽しく過ごせると思ってた。けど今になって漸く分かった。それは自分で自分の首を絞めてただけなんだって事。

誤魔化してきたつけが回ってきたかのように、どうしようもないくらい胸が苦しくて張り裂けてしまいそうだった。

スマホが震え、画面を見ると葉山さんからメールが届いていた。私がなかなか帰ってこないから心配してくれたみたいだ。

メールを返して、泣いた顔を隠す為念入りに化粧直しをして席に戻った。