「沙彩がココに会いに行った時には俺たちはもう別れてた。」

「え!? じゃあ、今も……?」

「ずっと別れたまま。 ココと再会して、ココ以上に沙彩の事を考えられなくなったんだ。」


真っ直ぐと見つめられて、秋ちゃんの真剣さが伝わってきた。その真剣な気持ちと向き合いたくて、私は目を逸らさなかった。


「再開した日、俺が素直になってれば……沙彩がココの所に行かなければ、俺たちはまた昔みたいになれてたかな?」

「……なれてたよ、きっと。 でも今は違う。 あれからたった数か月しか経ってないけど、色んな事が変わって、気付いた事もたくさんある。 もうあの時の気持ちには戻れない。」

「本当、ココは変わったね。 昔はそこまでハッキリと気持ちを言う事はなかった。 どこか照れくさそうにしてて、けど、それでもココが言いたい事とかやりたい事は分かったんだ。 今も分からなくはないけど、どこか知らない人にも見える。」


きっと秋ちゃんも私と同じなんだと思った。

昔の想いが強すぎて、今の想いとぶつかってしまう。だから余計に自分の気持ちが分からなくなる。


「事故の後のリハビリを頑張れたのも、沈んでしまいそうになる気持ちを持ち上げられたのも秋ちゃんへの大好きな気持ちがあったからだよ。 でもね、今思えばその想いに依存してただけなのかもって……急な別れだったから引きずってたのかもって……そう思う自分が居る。 今でも大好きだよ。 けどそれは……」

「幼馴染として?」


頷くと同時に涙が一粒流れた。


「ココと話して少し気持ちがスッキリした。 俺も昔に囚われ過ぎてたのかもしれない。 再開した日、本当は抱きしめたかった。 その時のを今しても?」


私が笑うと秋ちゃんも優しく笑ってそっと抱きしめられた。私も秋ちゃんの首に腕を回した。耳元で「ココありがとう。」と言われて涙が溢れた。私の言葉は声にならなくて、秋ちゃんに笑われてしまった。そんな私たちの間は埋まる事なく空いたままだった。