秋ちゃんと並んで歩く廊下は変な感じがした。昔に戻ったみたいな感覚になる。


「加賀美さん、大丈夫だった?」

「……あぁ。 それより、沙彩がごめん。」

「いいの。 ビックリしたけど、気持ちは分かるから……。」


それからまた沈黙になり、秋ちゃんの隣を静かについて歩いた。そして改めて感じた。私が知っている秋ちゃんとは少し違うなって。

背も伸びて、体格だって昔よりしっかりしていて、顔つきも男っぽくなった。知っているのに知らない人の様な感覚。

連れて来られた場所は人気のない階段だった。


「ここなら誰も来ないと思うから、ゆっくり話せる。」

「そっか。」

「そっかって……相変わらず危機感がないよね。」

「危機感って言われても、相手秋ちゃんだし……。」

「幼馴染でも俺だって男だよ? 襲わない保証なんてない。」

「秋ちゃんは人が嫌がる事はしないよ。 そんな事したら自分が傷付いちゃう事を知ってるから……ね?」


私の知ってる秋ちゃんは争い事が嫌いで、喧嘩をして相手を傷つけるとそれ以上に自分が傷ついて落ち込んでしまう。人の痛みを自分の痛みの様に感じてしまう人。

笑いながら秋ちゃんは階段に座った。人一人分のスペースをあけて私も座った。この距離が今の私たちの距離。近すぎず遠すぎず、けどお互いの事はそれなりに分かる距離。