めくるめく恋心

「心の事は信じてるよ。 けど、早瀬君の言葉からして心と直接話したって事だよね?」

「恵奈ちゃんのお家に泊まりに行った時、たまたま直ちゃんと秋ちゃんが来たの。」

「俺が電話した時にはもう居たの?」

「……うん。」


千里の溜息が聞こえた。下を向いてるから顔は見えないけど、いい顔をしていないことぐらい見なくても分かる。


「その時言ってくれれば良かったのに。」

「だって……決勝前だったから……落ち着いた時に話そうって思ってたんだけど、言いづらくて結局こんな形で話す事になっちゃって……本当にごめんなさい。」

「それ以降も会ってるの? 連絡は?」

「それ以来会ってないよ。 今日会ったのだってたまたまだよ。 連絡は幼馴染四人のグループでメールはしてるけど、二人ではしてないよ。」

「許さないって言ったらどうする?」

「……困る、かも。」

「心は本当にもう……。」


そう言うと千里は私の膝の上に頭をのせた。ベンチの上で横になった千里の顔を見降ろした。すると手が伸びてきて頬に触れられた。


「キスしてくれたら許す。」

「え!? ここで!?」

「そう、ここで。」


周りに人はがちらほら居るけど、見られない内にと体を曲げて一瞬唇が触れるだけのキスをした。けど唇が離れて直ぐに千里の手が私の後頭部に回り、驚いているうちにまた唇が重なっていた。