めくるめく恋心

「マジでいらない。 つーか、帰りてぇから手、離して。」

「っ……。」


口調はいつもと変わらないのに、見た事のない冷たい表情に驚いて、気付けば手を離していた。

右京は何も言わずに行ってしまった。右京の姿が見えなくなるまでその場に立ち尽くした。

_人からあんな態度取られたの初めて……何で?

顔だって綺麗な方で、化粧や髪型にも人一倍気を遣って、体型だってジムやエステで綺麗に保って、その上お金だってある。ちょっと気のある素振りを見せれば今までの男は食いついてきた。好きになった人と結ばれなかった事なんてない。

立ち尽くしていると鞄の中のスマホが震えた。

右京かも!っと期待してスマホを見たけど、運転手からの電話だった。


「……もしもし。」

「欄お嬢様、ご指定の場所に到着致しました。」

「えぇ、今行くわ。」


電話を切って肩を落とした。

_何期待してんだろ……電話どころかメールだって右京からきた事なんてないのに……。

さっきの右京は怒ってた……んだと思う。けれど、どうして怒っているのか見当もつかなかった。

_右京を怒らせるような事してないし……元々虫の居所が悪かったのかな?

いくら考えても分からなくて、帰りの車の中で一人でずっと悶々としていた。