めくるめく恋心

住んでたお家を見るとどうしても感傷に浸ってしまう。ある程度気持ちの整理がついてると思ってたけど、こうして思い出が詰まってる場所をじかに見ると辛い。

今日は手紙を持ってきたんだから、こんなところで泣きそうになってる場合じゃない。

私は鞄から手紙を取り出した。

何度も書き直した手紙。少しでも気持ちが伝わればいいんだけど……。

中々ポストに入れる決心がつかなくて、便箋に書いた秋ちゃんの名前をジッと見つめた。

_緊張する。

ここに来て何度深呼吸をしたか分からない。それでも気持ちが落ち着かない。


「家に何かご用ですか?」


頭上から声がして、咄嗟に頭を上げた。

間扉越しに視線が絡んだ。まさか会えるとは思っていなかったから、驚きすぎて上手く声が出てこない。


「しゅぅ……ちゃ、ん……。」

「ココ……?」

「えっと、う、うん……心だよ……久しぶりだね。 まだバスケしてるって聞いてたから、今日は部活でいないと思ってたんだけど、あの、だから会えると思ってなくてっ、手紙書いてきたの! 読んでもらえると嬉し……」

「帰ってくれ。」


さっきまでは上手く声が出なかったのに、緊張のあまり話し出したら早口になってしまった。そんな早口に喋る私の言葉をしゅうちゃんは静かな声で遮った。秋ちゃん会えた事で舞い上がっていた私は、言われた言葉を理解するまでに少し時間がかかった。